掲記事項の拡大

検査成果の速やかな反映を -「意見表示」、「処置要求」の積極的発動-

 明治憲法下の旧会計検査院法時代には、検査の結果法令や行政上の改善を必要と認めた場合、検査成績書に改善の意見を記載して天皇に上奏していました。
 しかし、直接の主務官庁等に対しては積極的に是正改善を要求する途がないため、検査の結果を直ちに行政に反映させることが困難でした。
 これに対し、現行の会計検査院法では、第34条及び第36条で、主務官庁等に対して直接意見を表示し又は処置を要求することができることとされ、権限が大幅に強化されました。
 しかし、戦後の一時期においては乱脈な不当経理が多発したこともあって、昭和36年まではいわば不当事項の指摘一辺倒で、その効果的な再発防止策を考究し「意見表示」あるいは「処置要求」を行うことまではあまり力が注がれていませんでした。
 このような傾向に対して、36年には国会から再度にわたって「意見表示」、「処置要求」の積極的発動を促す要請がなされました。また、30年の補助金適正化法の制定などにより不当事項の指摘が相当減少したこともあって、会計検査院内部でも検査の多様化の必要性が強く認識されるようになりました。そして、37年に一挙に8件の「意見表示」、「処置要求」が行われて(22年から36年までの15年間では合わせても14件しかありませんでした。)、ますますその気運が高まり、以後毎年相当数の「意見表示」、「処置要求」がなされています。

意見表示、処置要求を行う前の改善事項も -「処置済事項」の掲記-

 会計検査院が、検査の過程で「意見表示」、「処置要求」を行う必要があると考えて指摘し、その事務処理を進めている段階で、当局において、不適切な事態の速やかな再発防止のため、積極的に会計検査院の指摘の趣旨に沿って改善の処置を講ずるケースが少なからずあります。
 この事項も会計検査院の検査成果であり、検査の事績の大きな柱のひとつであることから、昭和41年度検査報告から「処置済事項」という場を設けて掲記することになりました。
 この掲記事項については、多様な検査の事績をできるだけ国民の前に明らかにすることが会計検査機関として極めて重要であること、他の検査対象機関における同種の事業運営や経理執行等の参考にもなることから掲記しているものです。

特定のテーマについての検査状況の報告も -「特定検査状況」の掲記-

 平成元年度以前は、不適切な事態や不合理な事態として指摘した事項だけを検査報告に掲記していましたが、近年、行政活動の透明性が強く求められてきており、これは会計検査院の検査活動についても同様です。こうした声にこたえるため、国民の関心が極めて高いテーマや検査上重要なテーマについては、不適切な事態として指摘をするに至らない場合であっても、どのような検査をしたかを明らかにする必要があると考え、2年度検査報告から「特定検査状況」という掲記の場を新たに設けて、その検査状況を記述しています。

検査要請に対する検査結果の報告も -「国会からの検査要請事項」の掲記-

 9年12月に国会法等が改正され、各議院又は各議院の委員会等は、審査又は調査のため必要があるときは、会計検査院に対し、特定の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができることとされました。
 10年4月には、衆議院決算行政監視委員会の協議決定に基づいて衆議院議長から初の検査要請(「公的宿泊施設の運営」)があり、同9月にその検査結果を国会に報告しました。これに伴い、9年度検査報告に「国会からの検査要請事項」という掲記事項を設け、その検査状況を掲記しました。
 また12年3月には、参議院行政監視委員会の協議決定に基づいて参議院からの検査要請(「政府開発援助に関する国会決議の実施状況」)があり、同11月にその検査結果を国会に報告するとともに、11年度検査報告にその検査状況を掲記しました。
 その後、国会からの検査要請事項については、要請の趣旨を踏まえて検査を実施し、その検査結果を国会に報告するとともに、毎年度の検査報告にその概要を掲記しています。

随時の報告も -「国会及び内閣に対する報告」の掲記-

 17年11月の会計検査院法の改正により、会計検査院は、意見を表示し又は処置を要求した事項その他特に必要と認める事項については、随時、国会及び内閣に報告することができることとされました。
 これを受けて、会計検査院は、毎年数件を、検査報告の作成を待たずに検査結果を国会及び内閣に対して随時に報告するとともに、その概要等を検査報告に掲記しています。

是正措置状況の報告も -「不当事項に係る是正措置の状況」等の掲記-

 会計検査院は、これまで、決算検査報告に掲記した不当事項について、保険給付金の返納、補助金の返還、手直し工事などの処理が完了しているかどうかの把握を行い、処理完結にいたるまで毎年報告書を徴するなどしてフォローアップを続けてきました。また、処置済事項についても、当該処置が履行されるまでその履行状況のフォローアップを続けてきました。
 そして、このような指摘事項のフォローアップに対する国会の議論や国民の関心の高まりを受けて、「不当事項に係る是正措置の状況」及び「処置済事項に係る処置の履行状況」についての検査の結果を平成19年度以降の決算検査報告に掲記しています。
 また、会計検査院は、社会経済の動向等を踏まえて国民の期待にこたえる検査に努めており、特に、国会で議論されたり、新聞等で報道されたりなどした国民の関心の高い事項については、適切に対応することとしています。
 そして、このような国民の関心の高い事項についての検査結果を一覧にするなどした「国民の関心の高い事項等に関する検査状況」を平成19年度以降の決算検査報告に掲記しています。

特別会計財務書類の検査の報告も -「特別会計財務書類の検査」の掲記-

 19年3月に成立した「特別会計に関する法律」により、企業会計の慣行を参考とした特別会計財務書類の作成と国会提出が法制化され、特別会計財務書類は会計検査院の検査を経ることが新たに義務づけられました。
 これを受けて、会計検査院は、同法に基づき、内閣から送付された特別会計財務書類を検査して、同書類の検査を行った旨を内閣に通知し、回付しています。そして、内閣に通知した検査結果の概要を平成20年度以降の決算検査報告に掲記しています。

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