令和5年次会計検査の基本方針

会計検査院は、毎年次、会計検査の基本方針を策定しています。

令和5年次(4年10月から5年9月まで)の会計検査の基本方針は以下のとおりです。

令和5年次会計検査の基本方針

(令和 4年 9月 6日 策定)

会計検査院は、令和5年次の検査(検査実施期間 4年10月から5年9月まで)に当たって、社会経済の動向等を踏まえつつ、会計検査をより効率的かつ効果的に行い、会計検査院に課された使命を的確に果たすために、令和5年次会計検査の基本方針を次のとおり定める。

1 会計検査院の使命

会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する憲法上の機関として、次の使命を有している。
 会計検査院は、国の収入支出の決算を全て毎年検査するほか、法律に定める会計の検査を行う。
 会計検査院は、常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ、是正を図るとともに、検査の結果により、国の収入支出の決算を確認する。
 会計検査院は、検査報告を作成し、これを内閣に送付する。この検査報告は、国の収入支出の決算とともに国会に提出される。

2 社会経済の動向等と会計検査院をめぐる状況

近年、我が国の社会経済は、人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞、自然災害の頻発化・激甚化等への対応といった難しい課題に直面している。これらに加え、新型コロナウイルス感染症による影響が依然として続いており、同感染症への対応が引き続き課題となっている。また、国際情勢の緊迫化による国民生活や経済活動への影響についての対応も課題となっている。
 このような中で、近年の予算においては、社会保障、文教及び科学振興、防衛、公共事業等の各種の施策について予算措置が講じられている。そして、新型コロナウイルス感染症対策や国際情勢の緊迫化による国民生活や経済活動への影響に対応するための予算措置が講じられ、予期せぬ状況変化に備えるなどとして、多額の予備費が措置されている。また、政府は、新型コロナウイルス感染症への対応において、行政機関同士の不十分なシステム連携に伴う行政の非効率が明らかになったなどとして、デジタル社会の形成に向け、行政のデジタル化を推進するとしている。
 一方、我が国の財政状況をみると、公債残高は、連年の公債発行により増加の一途をたどる中、新型コロナウイルス感染症対策を実施するなどのための公債発行もあって、4年度末には約1029兆円に達すると見込まれており、4年度一般会計予算(補正後)における公債依存度は約35%、公債償還等に要する国債費の一般会計歳出に占める割合は約22%となっていて、財政健全化が課題となっている。このような中で、政府は、「財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む。」「ただし、感染症及び直近の物価高の影響を始め、内外の経済情勢等を常に注視していく必要がある。このため、状況に応じ必要な検証を行っていく。」などとしている。
 また、国会においては、国会による財政統制を充実し強化する観点から、予算の執行結果を把握して次の予算に反映させることの重要性等が議論されている。会計検査院は、国会から内閣に対して決算の早期提出が要請されたことも踏まえて、検査報告の内閣への送付を早期化しており、これにより国会における決算審査の早期化に資するとともに、検査結果の予算への一層の反映が可能となっている。
 このように財政健全化が課題となっており、また、予算の執行結果等の厳格な評価・検証、国民への説明責任を果たしていくことなどが重視されている。さらに、新型コロナウイルス感染症対策を始めとする各種の施策の実施のために多額の国費が投入されるなどしており、行財政についての説明責任に対する国民の関心は一層高まってきている。こうした中で、予算の執行について検査を行い、行財政に関する国民への問題提起等も含め、検査の結果を報告する会計検査院の役割は一層重要となっている。

3 会計検査の基本方針

会計検査院は、従来、社会経済の動向等を踏まえて国民の期待に応える検査に努めてきたところであるが、以上のような状況の下で今後ともその使命を的確に果たすために、国民の関心の所在に十分留意して、厳正かつ公正な職務の執行に努めることはもとより、検査業務の質の維持・向上に努め、次に掲げる方針で検査に取り組む。また、検査結果について、国民に分かりやすく説明するように努める。

(1) 重点的な検査
 我が国の社会経済の動向や財政の現状を十分踏まえて、主として次に掲げる施策の分野に重点を置いて検査を行う。

  • ・社会保障
  • ・教育及び科学技術
  • ・公共事業
  • ・防衛
  • ・農林水産業
  • ・環境及びエネルギー
  • ・経済協力
  • ・中小企業
  • ・デジタル

また、新型コロナウイルス感染症対策に関する各種の施策については、医療提供体制の確保、雇用・事業・生活に関する支援等のために多額の国費が投入されていることなどを踏まえて、各事業等の進捗状況等に応じて適時適切に検査を行う。
 なお、これら以外の分野等の施策についても、国民の関心等に留意しつつ、適時適切に検査を行う。

(2) 多角的な観点からの検査
 不正不当な事態に対する検査を行うことはもとより、事務・事業の業績に対する検査を行っていく。そして、必要な場合には、制度そのものの要否も視野に入れて検査を行っていく。
 検査を行う際の観点は、次のとおりである。

  • ア 決算の表示が予算執行等の財務の状況を正確に表現しているかという正確性の観点
  • イ 会計経理が予算、法律、政令等に従って適正に処理されているかという合規性の観点
  • ウ 事務・事業の遂行及び予算の執行がより少ない費用で実施できないかという経済性の観点
  • エ 同じ費用でより大きな成果が得られないか、あるいは費用との対比で最大限の成果を得ているかという効率性の観点
  • オ 事務・事業の遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかという有効性の観点
  • カ その他会計検査上必要な観点

これらのうち正確性及び合規性の観点からの検査については、なお多くの不適切な事態が見受けられていることを踏まえて、引き続きこれを十分行う。その際には、一部の府省等において不正不当な事態が見受けられたことも踏まえて、特に基本的な会計経理について重点的に検査を行う。また、入札・契約の競争性及び透明性にも十分留意して検査を行う。
 経済性、効率性及び有効性の観点からの検査については、近年の厳しい財政状況にも鑑みて、これを重視していく。特に有効性の観点から、事務・事業や予算執行の効果について積極的に取り上げるように努め、その際には、検査対象機関が自ら行う政策評価や効率的かつ効果的な事務・事業の実施のために政府が行う各種の取組等の状況についても留意して検査を行う。また、国等が保有している資産、補助金等によって造成された基金等の状況についても留意して検査を行う。
 そして、事務・事業の遂行及び予算の執行に問題がある場合には、原因の究明を徹底して行い、制度そのものの要否も含めて改善の方策について検討する。
 このほか、行財政の透明性、説明責任の向上や事業運営の改善に資するなどのために、国の財政状況、財政健全化に向けた取組、特別会計や独立行政法人等の財務状況について、国や法人の決算等に基づき分析を行うなどして検査の充実を図る。その際、企業会計の慣行を参考として作成される特別会計財務書類等の公会計に関する情報の活用にも留意する。

(3) 内部統制の状況に対応した取組
 検査対象機関における内部監査、内部けん制等の内部統制の状況は、会計経理の適正性の確保等に影響を与えることから、検査に際してはその実効性に十分留意する。また、内部統制が十分機能して会計経理の適正性の確保等が図られるように、必要に応じて内部統制の改善を求めるなど適切な取組を行う。

(4) 検査のフォローアップ
 検査において不適切、不合理等とした会計経理の是正やその再発防止が確実に図られるなど、検査の結果が予算の編成・執行や事業運営等に的確に反映され実効あるものとなるように、その後の是正改善等の状況を継続的にフォローアップする。
 また、検査報告等において不適切な事態を指摘する際には、当該事態に係る発生原因や改善の方策等を明記して、当該検査対象機関はもとより、他の検査対象機関における会計経理の適正性の確保等にも資するようにする。このほか、必要に応じて他の検査対象機関においても同種事態が発生していないか検査を行うなど適切に取り組む。

(5) 国会との連携
 検査に当たっては、国会における審議の状況に常に留意する。そして、国会法第105条の規定に基づく会計検査院に対する検査要請に係る事項の検査に当たっては、国会における審査又は調査に資するものとなるように、要請の趣旨を十分踏まえて必要な調査内容を盛り込むなど的確な検査に努める。また、国会における決算審査の充実に資するために、検査結果を適時に報告するよう、引き続き国会及び内閣に対する随時の報告を積極的に行うように努める。

(6) 検査能力の向上及び検査業務の効率化
 社会経済の複雑化や新型コロナウイルス感染症等による社会環境の変化とそれらに伴う行財政の変化、行政のデジタル化推進の取組等に対応して、新しい検査手法の開発を行うなど不断の見直しを行って、検査能力の向上及び検査業務の効率化を図り、検査を充実させていく。
 すなわち、検査手法や検査領域を多様化するための会計検査をめぐる国際的な動向を含めた調査研究、専門分野の検査に対応できる人材の育成や民間の実務経験者、専門家等の活用、リモートによる検査手法の活用を始め検査業務における情報通信技術の一層の活用等により、検査対象機関の事務・事業の全般について検査の一層の充実を図る。
 また、業務の効率化等を通じて、あらゆる職員が活躍できる職場環境の整備を推進し、人材の確保・育成、ひいては検査能力の維持・向上に資するよう努める。

4 的確な検査計画の策定

本基本方針に基づき、会計検査をより効率的かつ効果的に行い、会計検査院に課された使命を果たすために、的確な検査計画を策定して、これにより計画的に検査を行う。
 検査計画には、検査対象機関並びに施策及び事務・事業の予算等の規模や内容、内部統制の状況、過去の検査の状況や結果等を十分勘案して、検査に当たって重点的に取り組むべき事項を検査上の重点項目として設定する。その際、複数の府省等により横断的に実施されている施策又は複数の府省等に共通し若しくは関連する事項に対しては、必要に応じて横断的な検査を行うこととする。
 そして、検査に当たっては、検査の進行状況により、また、国民の関心の所在等にも留意しつつ、検査計画を必要に応じて見直すなど機動的、弾力的に対応して、検査の拡充強化を図る。なお、新型コロナウイルス感染症による検査対象機関への影響等に適切に配慮する。

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