第16号

検査報告に見る業務遂行上留意すべき諸点と会計検査研究への期待
平岡哲也

平岡哲也

 1943年生まれ。前会計検査院事務総局次長

1.会計検査院検査報告と他山の石

 plan→do→see→……の循環はマネージメント・サイクルと呼ばれるが,会計検査は,これに即していえば,seeのプロセスにあるものとされる。予算が実際に有効適切に執行され使用されたかのチェックを行い,不適切な事態の発生を牽制抑止すると同時に,検査の結果を次の予算の編成や執行に反映させていくことが,国の活動を健全に維持していく上で極めて重要である。

 会計検査院の検査報告は,このような検査活動の各年における成果をとりまとめたもので,毎年概ね12月上旬に内閣に手交され,その後内閣を通じて国会に提出されている。

 この中には,検査によって適切でないと認められた事態が個別に多数掲記されており,国会における決算審査の重要な資料として活用されることは勿論,できるだけ多くの関係者がこれを参照し,他山の石として留意しつつ各々の業務遂行に当ることが期待される。

2.業務遂行上留意すべき一般的事項の抽出

 検査報告に掲記された多数の指摘事項を通覧すると,いろいろな指摘事項に共通する一般的な留意すべき事項が浮かび上ってくることがある。検査報告を他山の石として幅広く活用する観点から,このような一般的留意点を抽出しとりまとめることが考えられる。

 平成8年12月に内閣に手交された7年度決算検査報告では,合計272件の指摘事項が掲記されているが,試みに,これについて何項目かの一般的留意点を抽出してみることとした。その結果は次の3に述べるとおりである。なお,各個別指摘事項の背景等についての解釈にある程度筆者の主観が入ることは避けられないので,以下は全くの個人的見解である。

3.『業務遂行上留意すべき諸点』−平成7年度決算検査報告指摘事項から−

(1) 時の推移に伴う実情変化が業務実施方法等に適切に反映されているか。

(指摘事例)

光ファイバーケーブルの調達方法について(経済性等のより向上した製品が市場に出てきていることが適切に反映されていない。)
下水道管の布設のために開削した溝の埋め戻し作業に係る経費の積算について(機械で行われる作業の範囲が拡大してきていることが適切に反映されていない。)

(2) 財政支出を行ったことが実際の効果に適切に結びついているか。

(指摘事例)

地域住民の利便に資するなどのため公立小中学校に設けられているクラブハウスについて(十分利用されていない。)
漁港における荷さばき,漁具保管修理等のための施設用地について(適切に利用されていない。)
プレジャーボート等を保管するため整備されている公共マリーナについて(適切に利用されていない。)
定年延長等のため労働協約の改定等を行った企業に支給される継続雇用制度導入奨励金について(実際の雇用継続に十分結びついていない。)

(3) 経費節減や収入増加に結び付く特別の割引・割増制度等が適切に利用されているか。

(指摘事例)

下水道料金の支払について(下水道に排出する汚水の量が上水道水使用量と著しく異なる場合に減水量分を控除して料金の算定ができる制度があるが,これを適切に活用していない。)
郵便料金の支払について(予め受取人の郵便番号ごとに区分した2000通以上の郵便物を同時に差し出す場合に受けられる料金割引制度を適切に利用していない。)
国立大学病院等の診療報酬収入について(一定の施設基準に該当する療養環境を備えているなどの場合に認められる診療報酬の特別加算制度を適切に適用していない。)

(4) 活用可能な有用な資料情報は適切に活用されているか。

(指摘事例)

所得税の課税額について(法人税の申告書等に記載されている情報が適切に活用されていない。)
医療保険における医療費に係る支払について(病院が,診療報酬請求額に関し,一定の療養環境を備えているなどとして加算制度を適用するためには,都道府県に対し,予め届け出て条件が充足されているか審査を受けることとされている。都道府県が別途定期的に把握している病院医師数等に関する資料が,加算の条件が充足されているかどうかの審査に適切に活用されていない。)

(5) 先入観にとらわれて,間違いをしていることはないか。

(指摘事例)

運転手に求められる運転免許の種類について(高速道路で使われているスイーパーは,一般自動車に該当し,一般運転手が運転できるが,主として一般道路で使われる路面清掃車は,大型特殊自動車に該当し,特殊運転手により運転されなければならない。高速道路用のスイーパーについて一般運転手では不可という間違った取扱がなされていたが,これについては一般道路用のものからくる先入観が働いていたことが考えられる。)
別々に請負契約がなされている2工事の一般管理費率について(両工事は,同一の工事会社が請け負い,一体の工事として並行して実施されている。工事規模が増大すればそれに応じて一般管理費率を逓減させるという経費積算ルールの下では,両工事を合わせた工事規模に対応する率を一般管理費率として適用する方がより適切であると認められた。この場合,別々に契約されているということが先入観となって,適切な検討がなされなかったことが考えられる。)

(6) 理解・検討に厳密さが欠け,間違いをしていることはないか。

(指摘事例)

国保組合に対する国庫補助金の補助の範囲について(全国土木国保組合に対する補助金に関し,作業現場の日雇労働者であっても,2ヶ月を超えて引き続き常用的に雇用されるなどの場合は,補助対象外となるが,これについて厳密な理解がなされていなかった。)
パイプカルバートの埋設に係る安定計算について(地盤を溝型に掘削して埋設する方式をとるか,あるいは,地盤上に管を置いて盛土する方式をとるかにより,計算結果は変ってくるが,これについての検討が厳密に行われていなかった。)

(7) 確認が不十分で,単純とも見えるような間違いをしていることはないか。

(指摘事例)

山腹崩壊防止工における法枠(のりわく)工に係る積算について(枠内吹付工の所要面積について,法枠の枠で囲まれた枠内部分の面積を用いるべきであるのに,誤って,法枠そのものの部分を含めた全体の面積を用いていた。)
陸上競技場における暗きよ排水管の設置に係る積算について(100m当りの歩掛りを誤って10m当りのものとして適用し,また,施行延長の計算上誤って一部分を重複して集計していた。)

(8) 多数の案件を大量処理する中で,一部申告者,申請者等の不誠実,不注意をチェックしきれていないことはないか。

(指摘事例)

租税の徴収について
社会保険料の徴収,社会保険給付の支払について
公的金融制度による融資について

4.会計検査研究への期待

 以上のように,今回は,検査報告に基づいて8項目の留意事項を抽出してみたが,いわばこれは大分類に相当するものであり,更にブレイクダウンして中分類,小分類の留意事項を抽出し,とりまとめることが考えられる。更に,今回は1ヵ年度分のみについて分析したが,多年度にわたって分析検討することが考えられる。また,諸外国の会計検査院の検査報告について分析検討を行い,国同志を相互に比較してみるのもおもしろいのではないかと思われる。

 宮川公男麗澤大学教授によると,諸外国においては,会計検査に関し,質量共に大変厚味のある研究活動がなされているそうである。確かに,会計検査報告の内容を見ると,国の活動の幅広い分野にわたる多種多様な問題点が具体的に記述されてぎっしりと詰めこまれており,しかも,それらは同時に,その国のその時々の世相,社会的関心等の状況を写すかがみのような面をもっている。会計検査そのものあるいは検査報告そのものが重要な研究対象となるとともに,検査報告をきっかけとして,あるいは1つの材料として社会,文化,制度等についての様々な研究を行うことが可能であると考えられる。

 事実,例えば,先に述べた8項目の留意事項を見ていると,特に前半の4項目からは,組織というものがもともと持っている避け難い偏りの存在を考えさせられる。組織は人がつくるものであるが,つくられた途端にそれは自己運動を始める。組織は,個人ではもちえない強大な力を発揮して社会に貢献するが,同時に,自己保全,セクショナリズム等のインセンティブを各々が強くもっている。そして,一旦ついた予算はできるだけ確保し続けようとしたり,ついた予算を節約して支出することには必ずしも熱心でなかったり,他の組織と比べて少なくとも同等の予算を何とか確保することに執着したり,有用な情報を組織相互間で活用することに熱心でなかったり,などのマイナスの偏りがどうしても生じがちとなる。組織というものの強大なプラス面を享受しながら,これらのマイナス面の発生をどのように回避していくことができるか,組織のメンバー,特に幹部の意識のもち方,組織の編成,改編あるいは運営の仕方,外部の監督・批判機関の活動のあり方等により,マイナス面の発生にはどのような変化,影響が見られるのか,また,これらの点についてどのような工夫が考えられるのか,などの点は,現代社会にとって重要な関心事であり,これらについて分析し理論化することなどは,研究領域としても大変興味深いもののように思われる。

 会計検査そのものについての研究,あるいは,会計検査をきっかけとする,もしくは1つの材料とする様々な分野の研究が更に活発に行われ,社会の安定,発展に更に幅広く貢献するようになることが強く期待される。

(参考)個別案件毎に見た留意すべき事項

 上記8項目の一般的留意点をとりまとめる過程で,別途,各個別案件毎に個別の留意すべき事項を抽出してみた。関連すると思われる一般的留意点毎に整理してこれらを列挙すると,次のとおりである。但し,どの一般的留意点に関連しているかの判断については,なかなか簡単に割り切れないことが多く,事態の背景などについての推測を交えながらどこかに無理に所属せしめたようなケースもある。その点文字どおり個人的見解であることをお断りしたい。なお,〈 〉内は,7年度決算検査報告で掲記されている箇所のページ数である。

(1) 時の推移に伴う実情変化が業務実施方法等に適切に反映されているか。

 ① 光ファイバケーブルについては,電子機器メーカーが自社で製造した心線を加工会社に供給しこれを加工させたものではなく,近年,心線の製造から加工まで一貫して行う光ファイバケーブルメーカーによる製品が広く使用されるようになってきており,かつ,その中には,経済性等のより向上したテープ型心線(複数の光ファイバをテープ状に束ねるなどした心線。平成5年JIS規格化)を用いた光ファイバケーブルが含まれるようになってきている。〈P39〉

 ② 四半期毎に行われる法人企業動向の調査において,調査員による訪問調査の割合は著しく低下し,より低経費の郵送調査により殆どが行われるようになってきている。〈P43〉

 ③ パレットを用いた政府米の一貫荷役機械輸送において,パレットの回送経路の簡素化,パレットの検査の簡略化が進んできている。〈P195〉

 ④ 下水道管の布設のために開削した溝の埋め戻し作業において,管部分の土砂の投入も,人力ではなく機械で行われるようになってきている。〈P273〉

 ⑤ トンネル工事において,近年,堀進機の性能が向上し,中硬岩程度まで掘削が可能となるなど機械掘削方式による施工の範囲が拡大してきており,その場合,爆破掘削方式に比べて余堀や掘削面の凸凹がより少ないものとなっている。そのため,吹付コンクリートと覆工コンクリートの間に敷き詰める防水シートのロス率が低下してきている。〈P296〉

 ⑥ 高速道路橋りょうの工事現場で製作するプレストレストコンクリート桁(PC桁)に係る鉄筋の加工組立作業において,近年,山間部にPC桁を多径間にわたり架設する工事がふえていることなどから,鉄筋の加工を別の場所で行いトラッククレーンを用いて運搬し組立を行う方式ではなく,加工から組立まで工事現場のヤードで門型クレーンを用いてまとめて作業を行う方式がとられるようになってきている。〈P299〉

 ⑦ 大規模宅地造成工事等において,近年,工事用の調整池等をきめ細かく設置する等防災管理体制の整備を図っていることなどから,将来別途工事で更に切土する予定の切土法面の場合,法面表土の周辺への流失防止を目的とする種子吹付け等の法面保護工は,これを施工しない例が多く見られるようになってきている。〈P317〉

 ⑧ 海外への図書,教材等の送付において,送付先の国,地域に関係なく物品等の海外送付は原則として航空便ではなく船便によることとしている例があり,船便においても,近年,輸送途上における紛失等の事故は発生しないようになってきている。〈P352〉

 ⑨ 近年増加している特急列車の新型車両においては,座席が改良され,これに伴って座席にはもたれカバーはついているがひじカバーはついておらず,1両当たりの座席数も減少しており,座席整備作業の作業時分が減少している。〈P373〉

 ⑩ ディジタル移動加入者電話交換機における音声処理装置について,この装置の一段あたりに接続できる基地局の数は,最も少ない場合で2局とされていたが,近年開発された新方式では1局のみの接続も可能となっており,一局のみの接続を行う場合には,接続機器であるインターフェース・カードは1枚ですむことになる。〈P380〉

(2) 財政支出を行ったことが実際の効果に適切に結びついているか。

 ① 地域に開放された公立小中学校の特別教室や屋内体育館を地域住民が利用する際の利便に資するなどのため,クラブハウス(校舎や屋内運動場の一角にミーティング室,更衣・ロッカー室などを設けたもの。普通教室等の区画に立ち入らなくても出入りできるよう専用の出入口が設けられている。)が設置されるようになってきているが,これが十分利用されていない例がある。〈P77〉

 ② 市町村は,特別養護老人ホームや養護老人ホームへの入所者が病院等に入院した時のため,入院中に必要となる日用品の購入に充てることができるよう入院日用品費をこれら老人ホームに支弁しているが,これについて,入院した老人に対する現金又は現物による支給が行われていない例がある。〈P141〉

 ③ 漁港施設用地(荷さばき所,給油施設,漁具保管修理施設等のための敷地)が適切に利用されていなかったり,漁港が漁港管理者に無断でプレジャーボート等の係留に利用されている例がある。〈P180〉

 ④ 公共マリーナ等において,プレジャーボートが保管されていない空きスペースが残っている一方,公共マリーナ等が所在する港湾区域に不法に係留されているプレジャーボートが多数見受けられる例がある。〈P214〉

 ⑤ 労働協約の改定等により,60才を超えて例えば65才まで定年を延長するなどした企業に対しては,申請により,継続雇用制度導入奨励金が支給されているが,実際には,労働協約の改定等が行われただけで,継続雇用の実があがっていない例がある。〈P243〉

(3) 経費節減や収入増加に結び付く特別の割引,割増制度等が適切に利用されているか。

 ① 下水道に排出する汚水の量が上水道水使用量と著しく異なる場合は,申告して認定を受けることにより,蒸気ボイラー設備の稼働等による減水量分を控除して下水道料金を算定することができる。〈P47〉

 ② 予め受取人の住所又は居所の郵便番号ごとに区分した2000通以上の郵便物を同時に差し出す場合は,利用者区分割引(割引率は差出通数に応じて5〜9%など)を利用できることがある。〈P283〉

 ③ 医療費について,(ア)一般病棟に入院している老人については,入院期間が6月を超える場合,看護料の点数はそれまでより低くなる〈P108〉,など医療費抑制的な各種の定めがある一方,(イ)一定の施設基準に該当する療養環境を備えているとして知事に届け出た保険医療機関において,重症者を個室又は2人部屋に入院させた場合には,入院環境料について特別の加算が認められる〈P85〉,など各種の加算制度が定められている。

(4) 活用可能な有用な資料情報が適切に活用されているか。

 ① 法人税の申告書等に記載されている退職手当の支払い,組合持分の個人からの取得などの情報について,これを所得税課税の事務に活用することができる。〈P54,P56〉

 ② 年金保険の保険者から年2回市町村に送付される新規裁定者一覧表について,これを国保の退職被保険者(国庫負担金の交付対象外)の届出の勧奨に有効に活用することができる。〈P147〉

 ③ 都道府県が定期的に調査把握している医師等の数に関する資料について,これを入院患者の医療費に係る療養環境加算(医師等の数が標準人員を充足していることなどが要件)が適正に算定されているかどうかの確認に活用することができる。〈P152〉

(5) 先入観にとらわれて,間違いをしていることはないか。

 ① 昭和60年から常勤医師3人未満の医療機関でも医療法人の設立が可能となり(医療法の改正),これにより医療法人となったものが多数あるが,(ア)医療保険については従業員は引き続き国保組合に加入しているのに対し,(イ)年金保険については,医療法人はすべて厚生年金保険が適用される事業所とされている。〈P90〉

 ② 地方公務員のうち,常勤職員については,すべて地方公務員災害保償法が適用されるが,非常勤職員については,(ア)一般の行政事務を行う官公署の場合は,地公災法の規定に基づき条例で定められた補償制度が適用されるのに対し,(イ)保健衛生,教育研究,土木建築などの現業を行う官公署の場合は,国の労災保険が適用されることになっている。〈P249〉

 ③ 主として一般道路で使われる路面清掃車は,旋回性能を重視するなどして専用に設計された車台を使用した特殊なもので,道路法上の大型特殊自動車に該当するのに対し,高速道路で使われているスイーパーは,旋回性能より速度の性能を重視するなどして普通トラックの車台にブラシ等を取り付けるなどしたものとなっていて,大型自動車に該当し,特殊運転手より労務単価が安い一般運転手が運転することができる。〈P304,P308〉

 ④ 火力発電所の定期点検工事及びその付帯工事(機器の更新,補修等を行うもの)については,それぞれについて請負契約が締結されているが,両工事は,同一の請負会社に請け負わせていて,限られた期間内に並行して実施するよう計画され,一体の工事として施工されている。このため,工事原価が高額になるに伴って一般管理費率が逓減することになっている場合,両工事の工事原価の合計額に対応する率の一般管理費率を適用することが適切であると考えられる。〈P339〉

 ⑤ 電話交換機の監視・試験・制御を行うための監視試験装置1台あたりに接続できる交換機のユニット数については,D70形交換機の場合は1ユニット,改良D70形交換機の場合は最大6ユニットまでとなっているが,D70形でも改造されている場合には最大6ユニットまで接続できることがある。〈P356〉

 ⑥ 不動産鑑定業者2社に借地料の鑑定評価を依頼したところ,いずれも当該土地には課税されていない都市計画税相当額を含めて鑑定評価を行っていた。〈P377〉

(6) 理解・検討に厳密さが欠け,間違いをしていることはないか。

 ① 全国土木国保組合に対する国庫補助金に関し,作業現場の日雇い労働者であっても,2ヶ月を超えて引き続き常用的に使用されるなどの場合は,補助対象外となる。〈P125〉

 ② 国保の退職被保険者(国庫負担金の交付対象外)になる時期は,本人が届出をした時期ではなく,国保の資格を取得した時期又は年金受給権を取得した時期のいずれか遅い時期にまで遡ることになっている。〈P127〉

 ③ 土留め擁壁の築造において,基礎地盤の土砂層に所要の許容支持力度が期待できない場合に,土砂層下部の岩盤上に置き換えコンクリートを施工することにより擁壁を支持させることとしていた。しかし,土砂層を掘削したところ想定した位置には岩盤が確認できず,安定計算について再検討したものの,土砂層の実際の許容支持力度を確認しないまま,置き換えコンクリートなしで施工していた。〈P166〉

 ④ パイプカルバートの埋設において,地盤を溝型に掘削する溝型とするか地盤上に管を置いて盛土する突出型とするかにより,安定計算の結果が変わってくる。〈P169〉

 ⑤ 生産者補給金の交付単価の基となる平均取引価格を算定するに当たっては,農協等が果実加工業者から実質的に生産者の手取りとなる奨励金等を受領した場合には,これを代金に加算して算定することになっている。〈P190〉

 ⑥ 雇用保険において,パートタイマー,アルバイト等の臨時労働者であっても,1週間の所定労働時間が20時間以上であるなどの場合には,加入対象となる。〈P227〉

 ⑦ ボックスカルバートを設置する暗きょ工において,各カルバートの継手部全周にわたり設けられた止水目地部にゴム製パッキングを取り付けることとして設計していたが,殆ど取り付けられていなかった。〈P256〉

 ⑧ 吹付法枠工において,コンクリートの配合で水が多過ぎたりしてはならず,また,はね返り材の除去を十分行わなければならない。〈P258〉

 ⑨ 電気通信施設の工事費の積算において,工場制作による特別注文品の購入費については,その価格に既に諸経費相当額が含まれていることなどを考慮して,諸経費の算定対象となる直接工事費に算入しない。〈P268〉

 ⑩ 公営住宅建設事業費補助金に関し,一定規模以上の団地建設において,合併処理浄化槽設置工事を建物本体工事と分離して実施した場合は,建物本体工事とは別にこれに係る補助金の交付を受けることができるが,これにより,既に過年度に,合併処理浄化槽設置工事に係る補助金の交付を受けていたのに,後に建物本体工事を行った年度に,未だ補助金の交付を受けていないこととして補助金額を計算し交付を受けていた。〈P270〉

 ⑪ 地方公共団体の中には,事務処理上特に必要があるものについて,一定の場合には,登記完了前であっても,道路用に取得する土地の補償金の全額を支払うことができることとする特例措置を定めているところがあるが,この特例措置を安易に適用している例があった。〈P277〉

 ⑫ 中高層住宅等におけるエレベーターの自動通報装置(故障検出装置からの信号をエレベーター保守会社に自動的に送信する等の機能を有する)の設置については,自動通報装置1台でエレベーター1台または2台に対応させていたが,3台までの対応が可能な場合がある。〈P313〉

 ⑬ 生乳供給調整緊急推進事業における助成金の交付については,淘汰された牛の年齢が搾乳中止時に4歳齢以下であることなどの要件が付されている。〈P325〉

 ⑭ 橋脚への鋼板取付作業において,複数の工法で試験施工を行い,そのうちから選んだ工法を採用するとして積算を行っていたが,更に経済的な工法がありそれによって作業が行われていた。〈P369〉

(7) 確認が不十分で,単純とも見えるような間違いをしていることはないか。

 ① 山腹の崩壊を防止するための工事において,法枠の枠で囲まれた枠内部分の面積を用いるべきであるのに,誤って,枠そのものの部分を含めた全体の面積を使用して積算。〈P161〉

 ② 貯水池を新設する工事において,洪水吐(こうずいばけ)(貯水池の水位が一定の高さを超えると越流水が放流されるように,貯水池の一角に一定の高さをもって設けられる放流装置)の中に越流水の減勢等のため隔壁を設ける設計としていたのに,構造図,配筋図を作成する際,誤って,隔壁を記入せず,これにより施工。〈P173〉

 ③ コンクリート被覆式護岸を設置する工事において,綱管杭の上端9m部分は,特に高強度の種類の鋼管を用いることとして設計していたのに,誤って,この種類のものを全く使用せずに施工。〈P212〉

 ④ 道路橋を新設する工事において,橋台の有効根入れ深さの値を正しい値(計画河床面から橋台底面までの深さ)の約3倍として設計。〈P261〉

 ⑤ 導水路の法面を保護するための工事において,吸出し防止材(土砂の吸出しを防止するもの)の設置歩掛かりを用いるべきであるのに,誤って,水までも通さない遮水・止水シートの設置歩掛かりを用いて積算。〈P263〉

 ⑥ 道路災害復旧のための法面工において,アンカー工の削孔延長について,コンピュータに誤った数値を入力し,これにより積算。〈P265〉

 ⑦ 陸上競技場のグラウンド排水工事において,暗きょ配水管の設置について,100m当たりの歩掛かりを誤って10m当たりのものとして適用し,また,施工延長の一部を誤って重複して集計し,これらにより積算。〈P267〉

(8) 多数の案件を大量処理する中で,一部申告者,申請者等の不誠実,不注意をチェックしきれていないことはないか。

 ① 租税の徴収について〈P51〉

 ② 社会保険料の徴収,社会保険給付の支払いについて〈P90,P95,P100,P227,P230,P234,P237,P239,P384〉

 ③ 公的金融制度による融資について〈P209,P288,P292,P328〉

このページトップへ
会計検査院 〒100-8941 東京都千代田区霞が関3-2-2[案内地図]
電話番号(代表)03-3581-3251 法人番号 6000012150001
Copyright©2011 Board of Audit of Japan