会計検査院の歩み

会計検査院の歴史

会計検査院は、明治2年(1869年)、太政官(内閣の前身)のうちの会計官(財務省の前身)の一部局として設けられた監督司を前身とし、その後、検査寮、検査局と名称の変遷を経て、明治13年(1880年)に至り、太政官に直属する財政監督機関として誕生しました。そして、明治22年(1889年)、大日本帝国憲法が発布されるとともに、会計検査院は、憲法に定められた機関となり、以後60年間、天皇に直属する独立の官庁として財政監督を行ってきました。

昭和22年(1947年)、日本国憲法が制定され、憲法第90条の規定を受け、現行の会計検査院法が公布施行されました。会計検査院は、同法において、内閣に対し独立の地位を有するものとされました。改められた主な点は、国会との関係が緊密になったこと、検査の対象が拡充されたこと、検査の結果を直ちに行政に反映させる方法が定められたことです。

会計検査の動向と変遷

会計検査院では、社会経済情勢の変化や国民の期待に積極的に対応して、検査活動を発展させてきました。そして、これにより数多くの様々な検査成果を上げています。

会計検査の歩み 会計検査の歩み

検査領域の拡大

(1)「ハード」から「ソフト」への検査の拡大充実

医療費の検査

医療費検査の領域は、医療行為という極めて特殊な分野に関するものであり、高度の専門的な知識も必要とすることから、以前は、会計検査になじまないとか困難とされていた分野です。
しかし、高齢化社会の進展に伴い国民医療費は急増し、国の負担も厖大な額になってきている状況にあることから、会計検査院として避けて通れない重要な検査領域として浮上してきました。そこで、医療費検査の研究を進め、昭和62年頃から本格的に検査を行い、以後毎年検査報告に取り上げています。

年金の検査

年金の支給については、昭和60年頃から検査に取り組んでいます。そして、年金支給額がますます増大している状況を踏まえて、平成3年に年金担当の検査課を分離独立し、検査の充実を図ったところであり、新たな着眼や方法により、毎年多くの成果を上げています。

介護給付費の検査

平成12年に導入された介護保険については、まずその円滑な導入に資するための補助金や貸付金について検査を実施し、その結果を12年度検査報告に掲記しましたが、14年からは介護給付費本体についても本格的な検査を行い、その成果を掲記しています。高齢化が進展し支出額が膨大に上っていることから、重要な検査領域の一つとなっています。

(2)会計検査の国際化

政府開発援助(ODA)の検査

昭和61年に、いわゆるマルコス疑惑が表面化し、ODAの透明性と有効性が大きく問われ、会計検査院に対しても検査の充実強化が求められました。これにこたえて、会計検査院では、62年に、主としてODAの検査を行う外務検査課を新設し、本格的に検査を行うようになりました。

ODAについては、相手国に対する検査権限がないなどの制約がありますが、毎年調査官を派遣して、我が国の援助で建設された施設や調達された機材は有効に活用されているか、技術協力の成果は上がっているかなど、援助効果の側面を重視して現地調査を行っています。

海外プロジェクト等の実地検査

我が国が海外で実施するプロジェクトも多数あり、予算も多額になっています。また、対象が海外に及んでいる会計経理も多くなっています。そこで、平成6年以降、海外に赴いて、これらの検査を実施してきています。また、在外公館についても毎年実地検査を行っており、その結果を検査報告に掲記しています。

(3)制度の改変に対応して

消費税の検査

会計検査院は、平成元年の制度導入に対応して、消費税に対する検査の着眼点や方法の研究を進め、導入後3年余を経た平成5年から本格的に検査を開始しました。そして、同年の4年度検査報告で2600万円の消費税の徴収不足の事態を指摘しました。この徴収不足の指摘は以後も毎年続いています。

(4)公共調達の透明性・競争性の確保に向けて

入札・契約手続の検査

会計検査院は、公共調達について従来、過大な予定価格や高率な最低制限価格の設定により割高な契約を締結していないかなど、どちらかと言えば金額ベースで評価できる検査を行ってきました。しかし近年、公共調達の閉鎖性やいわゆる官製談合問題が指摘され、それが調達コストのムダにつながっているとして、透明性・競争性の確保が強く要請されています。

そこで会計検査院は、平成10年頃から入札・契約手続において、有効な競争が行われ経済的な調達に資するものとなっているかという観点からの検査を本格的に行い、9年度検査報告における防衛庁の航空タービン燃料の調達に関する指摘を始めとして、毎年度の検査報告にその検査結果を掲記しています。

(5)財政の理解や見直しのために

検査対象の決算分析

会計検査院では、これまで国の一般会計や各特別会計、各出資法人等ごとに決算等の概要を検査報告に記述するほか、平成7年度検査報告からは、国の財政の現状に関する情報を提供し、その理解に資するなどのため、これらの決算のうち財政全般に係る事項を取りまとめ整理して総括的に記述し、さらに10年度検査報告からは、各特別会計等の個別の決算について順次、掘り下げて分析した状況を記述しています。

このような状況の中で、近年の社会経済の大きな変容、厳しい財政事情等を背景として、昨今、財政の現状や課題に対する関心が著しく高まっています。

そこで会計検査院は、こうした関心にこたえ広く財政の見直し等に資する情報提供や提言をより一層充実させるため、13年に、国や国の出資法人の横断的・統一的な分析を担当する課・室を設け、決算分析の充実を図ることにしました。

(6)検査の観点の多角化

業績の評価も -3E検査の充実拡大-

会計検査院は、正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性などの様々な観点から検査を行っています。かつては合規性の観点からの検査が比較的大きな比重を占めていましたが、昭和40年代頃からは有効性の観点からの検査にも取り組み、その検査結果を検査報告に掲記しています。

また、昭和57年度の検査報告からは、第1章に検査の概況として上記5つの検査の観点についての説明を記述するようになりました。このうち、経済性、効率性及び有効性の観点については、「事業が経済的、効率的に実施されているか、つまり、より少ない費用で実施できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという経済性、効率性の側面、事業が所期の目的を達成し効果をあげているかという有効性の側面」と記述しています。そして、経済性、効率性及び有効性の検査は、それぞれの英語の頭文字が「E」(Economy、Efficiency、Effectiveness)であることから、「3E検査」と呼ばれています。

平成9年12月の会計検査院法の改正により、会計検査院は、正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点、その他会計検査上必要な観点から検査を行うこととする旨の規定が加えられましたが、上記のとおり、この改正以前からこれらの観点からの検査は行われてきているものであり、この規定は、検査の観点に関して創設的な意味を持つものではなく、検査の観点に関する法律上の根拠を確認的に明定したものと考えられています。

会計検査には、正確性や合規性の検査はもとより、広く事業や施策の評価が求められていることから、会計検査院は、その期待に応えるべく、3E検査、中でも事業や施策の効果を問う有効性の検査の充実拡大に努めており、検査報告にその成果を多数掲記しています。

また、政策評価法等により、政府においては、必要性や有効性等の観点から政策の効果を評価するシステムの導入が図られていますが、会計検査院としてはこうしたシステムも手掛かりにして有効性等の検査の更なる充実を図るとともに、政府の外部監査機関として、評価が適切に行われるよう留意していきたいと考えています。

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